奇跡の脳

画像: 奇跡の脳
投稿者: ジル・ボルト テイラー
出版社: 新潮社 (2009)
装丁: ハードカバー, 255 ページ
私の評価: 
5

神経解剖学者として順調にキャリアを重ねていた著者が、37歳のときに脳卒中に見舞われた。その日、脳卒中によって数時間の間に壊れていく自分を神経解剖学者ならではの視点で見つめ描写したところ、そして、手術の後、次第に回復していく様、また、この体験から得た物、これらはまさに専門家である著者にしか書けないものだ。

有名な本なのであちこちに書評があるが、なんといっても、まずは TED の有名なビデオを見るべきだろう。

学者の書いた本ということで、いわゆる一般向けの科学書のような本を想像したが、内容はきわめて平易ですらすら読める。竹内薫さんの訳もよい。著者の独白の箇所は「~しちゃう」とか「どーゆーこと」などのような文体になっていて、これがまたすごくリアル。

脳卒中によって左脳の機能が損なわれたとき、どのように認識が変化していくのかを描写したところが非常に興味深いが、それと同じように重要なのが回復していく過程の描写である。脳卒中になった人がどのような内面を持っているのか、どうすれば回復の手助けができるかといったことが述べられている。

後半は、左脳の活動が制約され右脳が支配したときの宇宙との一体感の体験から得られたことが述べられており、やや宗教じみた感じもしてちょっとついていけなくなる点もあるが、じっくり読めばなるほど確かにその通りと思うことが書いてある。食べ物の味や、いろいろな香りや、皮膚の感触、音に耳をすませることなどの感覚を大事にすること、などなど。